医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.310、311】

今回は、誤嚥に関して病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.310の事案では、死亡した4歳の女児の逸失利益を算定するにあたり、裁判所は、(女性労働者の平均賃金ではなく)男女を合わせた全労働者の平均賃金を用いるのが相当であると判示しました。

その理由として、裁判所は、今日女子の社会的進出はめざましいものであるが、この傾向は今後一層進んでいくものと思われるし、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」の規定などからも、現時点において男女間に収入の格差があるからといって、これがこのまま長期間にわたって続くとは考えられないだけでなく、このような男女格差の是正されない状況が長期間続くことはあり得べきことではないからであるとしました。

No.311の事案では、担当看護師は、おにぎり提供後約5分おきに患者の状態を確認していた旨供述し、看護日誌にも記載していましたが、裁判所は、看護日誌の訂正前の記載によれば、18時5分におにぎりを提供した後、18時35分になって患者の病室を訪れて窒息状態の患者を発見したこととなるところ、担当看護師の本人尋問の際も、いったんは、「30分後に患者の病室に戻ってきた」旨供述していること及び看護日誌の不自然な記載の仕方などに照らせば、担当看護師は、18時5分におにぎりを提供した後、18時35分に窒息状態の患者を発見するまでの間、患者の病室に戻らずに、患者の摂食の様子を見守っていなかったものと推認するのが相当であると判示し、担当看護師の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2016年5月10日
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