今回は眼科の手術に関し医師の過失が認められた判決を2件ご紹介いたします。
No.308の事案では、患者に後遺障害が発生しており、裁判所は、通常ならば労働能力を27%喪失したものとして逸失利益を算出するのが相当であるが、会社社長であった患者が、手術後も社長退任までは、報酬(年額2700万円)を減額されず、社長退任後会長になって年額が2520万円に減額されたことから、現に従来どおりの報酬を受けている以上、その間については逸失利益はないものと評価せざるを得ないと判断し、社長退任から社長在職予定であったとする72歳に至るまでの5年間の報酬減額分から中間利息を控除した額を逸失利益と算定しました。
No.309の事案では、訴訟提起前に、患者と医師の間で、他院での治療費及び患者の営業にかかる交通費につき、患者が医師に領収書を提出し、医師が相当額を支払う旨の合意書が取り交わされており、医師側は、合意書に基づく既払金は患者の損害に充当されるべきものであると主張しましたが、裁判所は、医師の主張する既払金は、患者が本件訴訟において損害金と主張する以外の治療費及び交通費について、合意書に基づき任意に支払われたものである等として、医師の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。