医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.304、305】

今回は皮膚の移植手術に関して、医師の説明義務違反が認められた事案を2件ご紹介します。

No.304の事案では、慰謝料40万円の金額を決めるにあたり、以下の事情が斟酌されました。

手術の結果、患者の鼻が腫れたり、左腰背部が痛んだりしたこと。鼻に違和感が残り、顔に不釣り合いなほど鼻が大きくなったと感じて、医師の挿入した真皮を除去するための再手術を2度受けたこと。左腰背部の傷が予想以上に大きく目立ったため、サウナや水泳等、傷のある箇所を露出するような格好になることが恥ずかしくてできなかったこと。術後3年経ってもなお傷痕が残り、以後は色が薄くなる可能性があるに過ぎないこと。

客観的には、手術後の患者の鼻の部分は、本人が気に病むほど顔に不釣り合いな形をしておらず、また、移植挿入物を除去した現在も、鼻に関しては、外見上傷痕はなく、また、異常な形をしているわけでもないこと。患者においても不明な点を自ら問い質すことや自らもより慎重に対処し得たと思われること。

なお、患者は、ノイローゼになったり、辞職をしたり、婚約が破棄になったと主張しましたが、裁判所は、本件手術との因果関係を認めませんでした。

No.305の事案では、慰謝料400万円の金額を決めるにあたり、以下の事情が斟酌されました。

患者の右肩には筋力低下等の機能障害が生じていること。患者は、本件手術箇所の形成のための一連の入通院等と通じ、自己の身体に多数回の侵襲を受けることを余儀なくされた上、長時間の時間的拘束を受け、その結果、音楽大学の受験を断念せざるを得なくなるなど、大きな精神的苦痛を被ったこと。本件手術後の形成手術の結果、患者の本件手術箇所の外観は相当に改善されたこと。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2016年2月10日
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