今回は3歳児の患者に対する病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介します。
No.296の事案では、患者に対してマウスツーマウスを行わなかった小児科医師が用手人工呼吸法には習熟していたがマウスツーマウスには不慣れであった点につき、裁判所は、いくつかの医療技法が併存する場合、そのいずれかの手法を選択するかは原則として医療担当者の裁量に委ねられていると解されるが、用手人工呼吸法はマウスツーマウスに比してはるかに効率が悪く、通常は用いるべきではないとの医学的知見が既に通説になっていたことからすれば、本件においてはそのような裁量の余地はなかったと判示しました。
No.297の事案では、裁判所は、患者のベッドからの転落事故に関する看護師の過失と患者の死亡との間に相当因果関係は認めたものの、本件事故当時、患者においては神経芽細胞腫が脳実質内に転移しており、その予後が不良であること、そのため仮に本件事故前に神経芽細胞腫の摘出手術が行われ、かつ本件事故が発生しなかったとしても患者が18歳に至るまで生存できた蓋然性はほとんどなかったとして、遺族の請求した損害賠償項目のうち、患者の逸失利益については認められないと判示し、慰謝料と葬儀費用の損害賠償項目として認めました。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。