医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.288、289】

今回は薬剤投与に関する医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。

No.288の事案では、裁判所は死亡した患者の夫の慰謝料算定にあたり、次のように判示しています(一部省略・用語置き換えあり)。

「手術そのものは成功したにもかかわらず、本件抗癌剤の不当投与という全くの医師のミスにより、最愛の妻を無用な苦痛を与えた上で失うに至ったこと、抗癌剤投与により患者の症状が悪化していく中、夫が医師に心配で大丈夫かと尋ねたところ、絶対大丈夫等と言葉をかけられたにもかかわらず、結局妻は死亡するに至ったこと、死亡直前の妻が腹痛で病室の中を転げ回っているかのような様子を目の当たりにしていること、今まで商売の製麺業を妻とともに行ってきたこと等が認められ、これら諸般の事情を併せ考慮すると、夫が妻の死亡によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料は、金1200万円が相当であると認められる。」

No.289の事案では、患者の慰謝料算定にあたっての裁判所の判示は以下のとおりです。

(用語置き換えあり)

「前記認定のとおり、患者が被った後遺症は深刻であり、働き盛りの患者が仕事を失い、時間の感覚がなく、出会った人や起こった出来事について自らが体験した事実としての実感を持つことができない不安、恐怖、孤独感は図り知れず、かけがえのない妻や子供らとの思い出を自らの中に記憶として残していくことができない無念さは察するに余りある。このような患者の精神的損害を慰謝するには、金2000万円が相当である。」

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2015年6月10日
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