今回は検査に関連して医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。
No.262の事案では、最初に患者を診察し、薬剤の7日間連続投与を決定した医師については、医師としての注意義務違反はあるものの、患者の死亡との相当因果関係がないとして、損害賠償責任を負わないとされました。
他方で、この医師の診断を信頼した別の医師については、新たな検査の実施などの十分な検討を行わないまま、漫然と(最初の診察をした医師の決定に従って)薬剤の投与を指示し、その投与薬剤が原因で患者が死亡したとして、医療法人と連帯して、9000万円近い損害賠償を支払うよう命じられています。
No.263の事案の紹介にあたっては、判例時報の解説も参考にしました。
同事案は、平成12年9月22日の最高裁判決に依拠しています。この最高裁判決は、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったことと患者の死亡との因果関係の存在は証明されないけれども、上記医療が行われていたならば、患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性が証明される場合には、医師は、患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負うとしています。
No.263の判決の事案は、不法行為ではなく、診療契約締結に基づく債務不履行という法律構成をとっていますが、この場合でも上記最高裁判決と同様に考えられると判示しています。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。