医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.252、253】

今回は、手術における医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。

No.252の判決紹介にあたっては、掲載誌である、判例タイムズ及び判例時報の解説も参考にしました。

No.252の事案では、患者側は「医療事故調査会の協力医」である「某大学の心臓血管外科の教授」が匿名で作成したとする意見書を証拠として提出しました。患者側は、心臓外科という極めて特殊で専門的な分野において、患者側のために氏名を公表して協力する医師を探すことは困難であるとして、証拠採用を求めました。しかし、裁判所は、この点につき、まず、民事訴訟手続においては、文書は、真正な成立が認められて初めてその証拠力(証明力)の判断がされるものであり(民事訴訟法228条)、真正に成立しているといえるかは、当該文書の作成者の意思等が表示されているか否かであると判示しました。その上で、上記匿名意見書につき、文書の作成名義人の特定がないことを指摘した上で、内容が鑑定意見にも等しいもので、これを弾劾するには意見を述べるに相応しい資格、医歴等を有するかも問題となるところ、患者側の主張、提出証拠等をもっても、その人物が実在すると明確に認定することもできず、相手方に十分な反証の機会も与えることができない結果となるとして、証拠適格を欠くと判断し、上記匿名意見書について形式的な証拠能力を否定すると判示しました。

No.253の事案では、患者遺族側は、手術が国立大学病院で行われ、手術を担当した医師は国家公務員として医療行為をしたものであるから、医療行為は国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たると主張しました。しかし、裁判所は、本件のような医療行為については、私人として行う純然たる私経済作用というべきであるから、それが国公立病院の医師によるものであっても、「公権力の行使」には当たらないと判断しました。

患者遺族側の国家賠償法に基づく損害賠償請求には理由がないとしましたが、医師に民法709条の不法行為責任が発生する場合は、国立大学法人は民法715条の使用者責任に基づく責任を負うと判示しました。

両事案とも実務の参考になろうとか存じます。

カテゴリ: 2013年12月10日
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