医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.248、249】

今月は、刑事事件判決を2件ご紹介します。

No.248の事案については、No.20No.196でご紹介したのと同じ事故に関するものですが、今回ご紹介するのは、誤薬投与を行った看護師2名が業務上過失致死罪に問われた事件の判決です。

弁護人は、都立病院の体制上の不備に起因するところがあり、看護師2名の個人的な「単純ミス」と片付けてよいものではなく、本件後に改善された点もあるので、看護師両名の責任を考える上で考慮すべきと主張したようですが、裁判所は、誤薬事故をなくすために関係者が業務遂行体制を日々改善し、そのための努力を怠ってはならないことは言うまでもないことであるが、医師から投与を指示された薬剤を取り違えないことは、いついかなる場合においても看護師の患者に対する基本的な義務であり、怠ることの許されない義務であると判示しました。

No.249の事案で、控訴審判決は、正当業務行為性の判断枠組みにつき、「本件のような看護師が患者の爪を切り、爪床を露出させる行為について具体化すると、当該行為が、(1)看護の目的でなされ、(2)看護行為として必要であり、手段、方法においても相当な行為であれば、正当業務行為として違法性が阻却される」「なお、患者本人又はその保護者の承諾又は推定的承諾も必要であり、本件でもトラブル回避のためには個別的に爪ケアの必要性等を説明して承諾を得ることが望ましかったといえるが、一般に入院患者の場合は、入院時に示される入院診療計画を患者本人又は患者家族が承認することによって、爪ケアも含めて包括的に承諾しているものとみることができ、本件でもその承諾があるから、本件行為についての個別的な承諾がないことをもって正当業務行為性は否定されない」と判示しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2013年10月10日
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