今回は、呼吸管理・気道確保に関する病院側の過失が認められた判決を2件ご紹介します。
No.246の事案では、裁判所は、病院医師の過失を認めた理由の中で、患者の容態が急変したことが、医師の予想外のことであり、急性喉頭蓋炎が稀な疾患であって急変を予想できなかったことがある程度やむを得ないとしても、呼吸停止から約5分30秒の間、自ら、あるいは他の医師等をして、患者の気道確保に向けた実効性のある処置をとっていないことは、患者の生命に関わる重大な問題であり、当該市立病院が地域の基幹病院で、人的スタッフの面でも急患室も存在しているという物的設備の面でも、他の有効な処置を選択し実行することは可能であったとの指摘もしています。
No.247の事案では、裁判所は、損害額の算定のうち、逸失利益に関して、患者が大学病院に入院した時点で既に視床出血及び脳室内穿破の障害を負っていたことを考慮に入れ、さらにその障害がいつ症状固定に至るのかを明らかにすることも課題となるが、その予測は相当困難であるとして、患者の逸失利益については、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき(民訴法248条)に該当するとしました。
民訴法248条は、「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。」と定めています。
したがって、No.247の当該裁判所は、患者は後遺障害1級(労働能力喪失率100%)に該当するが、大学病院入院時の障害は、後遺障害7級(労働能力喪失率56%)程度に該当すると判断した上で、患者の左視床出血発症前の状況、左視床出血発症後の回復の状況及びその予後の見通し並びに弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて、患者の逸失利益相当額の損害額を1500万円と認定しました。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。