今回は、病院側に損害賠償が命じられた事案で、転医義務が争点の一つとなっている判決を2件ご紹介いたします。
No.244の事案では、ステントの回収作業に6時間余りかかっています。遺族はステント抜去のために転医すべきであったとの主張もしましたが、裁判所は、担当の内科医が、自身の病院の外科医2名の協力を仰ぎ、ステントの回収そのものには成功したとして、ステント抜去のための転医義務違反の過失は否定しました。
No.245の事案は、最高裁判所平成15年11月11日判決を引用して、「医師に患者を適時に適切な診断を行い、適切な医療機関へ転送するなど適切な措置を執るべき義務を怠った過失がある場合において、上記適切な措置が実施され、適切な検査、治療等の医療行為を受けていたならば、患者に両眼の失明という重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負うものと解するのが相当である」と判示しました。
医師の過失と失明との間の因果関係は否定しながらも、失明しなかった相当程度の可能性を侵害されたことによる慰謝料の賠償を命じた判決です。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。