今回は、不適切な歯科治療につき歯科医師の責任が認められた判決を2件ご紹介します。
No.236の事案では、緊密な根管充填が施されたか否かが争点となり、歯科医師は、ガッタパーチャポイントと糊剤(FR)を併用し、十分な充填を実施したが、X線写真上、充填剤が不十分なように写っているのは、糊剤が吸収されてしまっただけであると主張しました。
しかし、裁判所は、歯科医師が使用したとするFRには硫酸バリウムが含まれており、造影性を有するにもかかわらず、本件治療直後のX線写真をみても、FRと思われる不透過性が明らかであるとはいえないこと、歯科医師側が併用の主張をしたのが訴訟の途中からであること等を指摘して、FRの併用を認めませんでした。
No.237の事案では、患者は、他院で装着した当初のブリッジを取り壊された損害として、他院に支払った補綴費用を損害項目に含めて請求しました。
しかし、裁判所は、患者は他院で入れたブリッジの色に不満があり、本件クリニックに白い透明感のある補綴材について相談しに行ったのであり、患者にジルコニアブリッジが適応なのか否かを判断するに当たっては、いずれにせよ、患者の装着しているブリッジを取り外し、仮にブリッジ等を入れる必要があるとして、他院に支払った補綴費用を損害とは認めませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。