医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.23、24、25】

今回は、医師の過失について刑事責任が問われた裁判の判決を紹介します。

このうち、No.25(市立大学付属病院での患者取り違え事件)は、複数の看護師・医師の注意義務違反が重なって(「過失の競合」といいます)、患者が取り違えられたままそれぞれに誤った手術がなされるという結果が生じました。

そして起訴された6名の被告人(執刀医2名・麻酔医2名・看護師2名)のうち、今回ご紹介した一審(横浜地裁)判決では、麻酔医1名が注意義務を尽くした(過失がない)として無罪になりましたが、控訴審(東京高裁平成15年3月25日判決・未掲載)は、全員について過失を認めて有罪としました。また、一審で1名の看護師が禁固刑を言い渡されましたが、控訴審では全員を罰金刑としました。チーム医療での過誤において、刑事責任を負うか否かの境界は極めて微妙であるといえます。紹介が長文に亘りましたが、具体的な事実経過とそれに対する裁判所の認定は参考になろうかと存じます。 この事件では、直接には1名の患者についてだけの誤った手術に関与した医師についても、2名の患者(被害者)に対する「業務上過失傷害」の責任が認定されています。片方の患者の同一性確認をしていれば、もう片方の患者についても連絡をして手術を中止させる機会があったのに、同一性確認を怠ったことで、その機会をも失わせたからです。

なお、紹介判例では、「看護婦」と記載されている箇所について、本稿では「看護師」と表記しています。

カテゴリ: 2004年6月29日
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