今回は、美容整形に関する病院側の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介します。
No.226の事案では、手術代金の支払にショッピングクレジット契約が用いられ、開業医がクレジット会社から手術代金の立替払いを受けた後、患者が手術痕が残ったことを理由に、クレジット会社への割賦金の支払いを途中から停止しました。そこで、クレジット会社は残金相当額の支払いを開業医に請求し、開業医はこれを支払い、クレジット会社の患者に対する立替金請求権の譲渡を受けました。そして、開業医は患者に対して、反訴を提起して立替金の支払を求めました。
しかし、この反訴については、裁判所は、次の理由で開業医の請求を棄却しました。
まず、開業医が患者に対する診療契約上の義務を履行していないから、患者は開業医に対して手術代金の支払い義務を負わないと判示し、患者とクレジット会社との契約によれば、患者は開業医に対して主張しうる抗弁事項をもってクレジット会社に主張できると定めており、本件の場合、患者はクレジット会社からの請求を拒むことができると判断しました。そして、開業医が譲渡を受けた立替金請求権には、この抗弁が付着しているので、開業医が立替金の支払いを患者に求めることはできないと判断しました。
No.227の事案では、病院側は、手術の危険性について、書面だけでなく口頭でも説明したと主張し、それに沿った従業員の証言や被告本人の供述もありましたが、裁判所は採用しませんでした。
また、病院側は、術後スキンリハビリ等をきちんと行えば患者の状態が改善されたはずであった、再手術に関する合意があったとも主張しましたが、裁判所はこれらの事実を認めるに足りる証拠はないとして排斥しました。
両事件とも実務の参考になるかと存じます。