今回はMRSA感染について病院の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。
No.214の事案では、病院側は、患者が処方した以外の薬剤を経口服用したり、自己注射をするなど、異常な行動をとっていたことや患者の発言内容から、患者が何らかの作為を行い、それにより感染が発生した可能性が否定できないとの主張をしましたが、裁判所は、患者が行ったとする作為の内容については何らの証拠もないほか、患者が処方薬以外の薬剤を経口服用したり、自己注射をしたのは、MRSA感染が同定して手術が行われた時期から1年以上後であることなどから、手術前に患者が感染を生じさせる原因となる何らかの作為を自ら行ったとは認められないとして病院側の主張を採用しませんでした。
No.215の事案では、一審裁判所は、感染症の発症を防止するため、病院側は末梢血管静脈カテーテルを遅くとも72時間程度で挿入部位を変更して留置針の交換を行うべきであったと判示したのに対して、控訴審裁判所は、遅くとも96時間程度での交換を行うべきであったと判断し、一審の認定を一部変更しました。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。