医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.200、201】

今回は、幼児や乳児の患者が死亡した事案で、病院側の責任が否定された判決と認められた判決を1件ずつご紹介いたします。

両事案とも、解剖が実施されませんでした。

No.200の判決では、遺族側の主張に沿う内容の医師の鑑定書と証言がありましたが、裁判所は、これらが、遺族の陳述書に依拠して、診察に当たった医師らの証人尋問調書を資料としてないこと、下痢の回数についてもカルテの記載と異なる遺族の陳述書の記載に従っていること、急性脳症について的確な判断をなし得るほどの知識、経験に欠けること、小児救急でショックを診察した臨床経験もないこと等に照らして、医師らの過失を判断する資料としては限界があると判示しました。

No.201の判決では、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、事実と結果との間に高度の蓋然性を証明することであり、その判定は通常人が疑いを差し挾まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りる」とする昭和50年10月24日の最高裁判決を引用して、病院側は患児が死亡に至った機序は不明であると主張しました。これについて裁判所は、本件は解剖なども実施されていないため、死亡に至る機序について厳密な自然科学的見地からの判断には困難な点があるとしつつも、医学的に考えられる機序を複数挙げて、そのうち最も蓋然性が高いものは何かを検討し、それについて通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るか否かを判断するという手法をとりました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2011年10月 7日
ページの先頭へ