今回は手術に際しての麻酔管理の過失が認められた判決を2件ご紹介します。
No.192の事案では、裁判所は、「外科医師が外科手術に際し、麻酔管理を他の医師に委ねるのは、自己が手術に専従できるようにするためであり、特段の事情のない限り麻酔は外科手術の補助的手段である。麻酔担当医師は、術者である外科医師の指揮の下で患者に対して麻酔を行う。」と判示して、外科医師は麻酔担当医師の麻酔管理を監督すべき立場にあるとの一般論を判示しましたが、麻酔担当医師に過失のあった本件の具体的事案においては外科医師は監督責任を果たしているとして外科医師の責任を否定しました。
No.193の事案では、医学博士の意見書の中で本件手術について、専属の麻酔担当医師の不在、医師が麻酔中の患者の状態の監視を託した看護師は全身麻酔に対する経験が皆無に等しいこと、自動血圧計が30分間作動しておらず、それを医師も看護師も認識していなかったこと、硬膜外麻酔が不十分であることが判明した時点で行ったマスクによる揮発性麻薬投与は、気道確保に関しかなり困難性及びリスクを伴うが、その点を麻酔担当看護師が十分に理解していたとは考えられないことなどを指摘しています。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。