今回は、自然医学療法を受けていた患者に対する損害賠償義務が認められた判決を2つご紹介いたします。
両事案とも、患者は、当該医師の自然医学療法に関する著書を読んで、受診をしています。そして、両事案とも、自然医学療法以外の治療をしなかったことについての責任は問いませんでしたが、No.190では説明義務違反が認められ、No.191では転医義務違反が認められました。
No.190の事案では、判決は、医師の著書について、第三者的な視点からその療法の長所短所が述べられているような内容のものではなくて、当該医師の治療法の優位性を一方的に強調する内容のものであり、その記載内容がそのまま真実か否かの点については措くとしても、当該医師の著書に記載のある医師の治療を受けた患者の体験談については全てその成功例のみが列挙されているのであって、当該医師の治療法の成績として客観的なものを患者が知っていたとは到底認めることができないとし、むしろ治療法の成績に関する客観的資料を作成して、提示する義務があったというべきであると判示しています。
No.191の事案では、医師側からは患者の治療を受ける姿勢に問題があり、患者の損害は患者の自己責任によるものであるとの主張がなされましたが、裁判所は、患者が医師からの指示に従ったことをもって自己責任の問題とすることはできないし、患者の治療を受ける姿勢に問題も無かったとして医師の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になるかと存じます。