今回は、患者に対する行動制限(抑制・身体拘束)に関連した判例を2件ご紹介いたします。
No.182は、術後せん妄による転落死にいたった患者の遺族から、患者について体幹・両上肢の抑制を実施すべきであったという主張が大学病院側に対してなされた事案です。
裁判所は、大学病院の「行動制限(抑制・拘束)に関する方針及び適応基準」の記載内容も引用し、患者について自傷行為、転倒・転落、不穏、激しい体動及び興奮等による事故が予想される状態ではなかったことに照らして、抑制を実施すべき義務はなかったと判断しました。
No.183は、当時80歳の高齢女性患者に対する身体抑制が違法だとして、患者遺族が慰謝料等の請求をした事案です。裁判の経過は、一審が患者遺族の請求を棄却し、控訴審は違法性を認めて遺族の請求を一部(70万円)認容し、最高裁判所で再び違法性を否定して、遺族の請求を棄却しています。紹介にあたっては、控訴審の判決(名古屋高裁平成20年9月5日判決・判例時報2031号23頁)も参考にしました。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。