医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.168、169】

今回は乳幼児医療に関する事案を2件ご紹介します。1件は病院側の責任が認められ、もう1件は否定されました。

病院側の責任を認めたNo.168の事案では、病院側はPVL(脳室周囲白質軟化症)の告知は、しばしば児童虐待に結びつく悲観的な告知であるとの主張もしたようですが、裁判所は、子の成育上の問題は、児童虐待の発生要因の一つにすぎないし、虐待の具体的な危険性があるか否かは、医師らが報告・説明をどの時点で行うかを判断するために考慮すべき一事情に過ぎないと判示しました。そして、本件の母親が脳性麻痺等による障害児の医療や運動療法を実践している病院に看護師として勤務していた経験があることなどから、報告・説明を尽くすことによって、母親が子に対し虐待を加える危険性があったとは到底認められないとして、PVLの告知が抽象的に子の虐待につながるおそれがあるからといって、退院までに報告・説明を尽くさなかったことを正当化できないと判断しました。

病院側の責任を否定したNo.169の事案では、鑑定人が、被告医師が小児科医ではなく、産婦人科医であったことを指摘し、産婦人科研修の必要知識をまとめた雑誌の解説に、髄膜炎などの発熱児の重症細菌感染症の鑑別についての解説がなされていないことなどから産婦人科医である被告医師が新生児の発熱に対する認識が不十分であっても責任を問われるものではないという鑑定結果を述べており、これが裁判所の判断に影響を与えた可能性が高いと思われます。

両事件とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2010年6月 7日
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