今回は、終末期医療の適否が問題となり、医師の責任が認定された事案を2件ご紹介します。
No.162は、マスコミでも大きく報道された刑事事件です。紹介にあたっては、一審判決(横浜地方裁判所平成17年3月25日判決・判例タイムズ1185号114頁)及び控訴審判決(東京高等裁判所平成19年2月28日判決・判例タイムズ1237号153頁)や、事件を報道した新聞記事も参考にしました。
なお、医師の免許の取り消しや医業停止といった行政処分にあたっては、医道審議会の意見を聴くことが医師法で定められています。医師が刑事事件を起こした場合も自動的に行政処分が下されるわけではなく、医道審議会の審議や、意見の聴取といった行政手続きを経ることとなります。
No.163は、一般的な医療水準に照らして不適切な特殊な診断・治療法を末期癌患者に対して行っていた事案です。患者の死亡との因果関係は否定されましたが、適切な診察及び治療を受けられなかったことによる期待権侵害についての慰謝料として700万円の支払いが医師に命じられています。
両判決とも実務の参考になろうかと存じます。