医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.16、17】

(1)最高裁判所のホームページで紹介されている判決から、今回は「死亡した癌患者の延命の可能性」が争点となっている最高裁判決と高等裁判所判決を選びました。

(2)前回ご紹介したNo.14の最高裁判決と、今回ご紹介するNo.17の最高裁判決の両方が、平成12年9月22日の最高裁判決を引用しています。そこで、この平成12年最高裁判決についてもここで簡単にご紹介します。

医師の過失は認められるけれども、患者の死亡等との間の因果関係が立証されない場合に、医師に何らかの損害賠償責任(裏返せば患者の救済)が認められないかという問題が、いわゆる「期待権侵害論」「治療機会喪失論」などとして議論されてきました。

そして、平成12年判決は、「医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったことと、患者の死亡との間の因果関係は証明されないけれども、右医療が行われていたならば患者がその死亡の時点において、なお生存していた相当程度の可能性が証明される場合には、医師は、患者が右可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う」との判断をしました。

期待権侵害論や機会の喪失論をそのまま採用したわけではありませんが、「過失がなければ生存していた相当程度の可能性」が法によって保護されるべき利益であることを明らかにした画期的な判決といえます。

そして、平成12年判決は「死亡事案」における「不法行為責任」に関するものでしたが、No.14の判決は、死亡ではなく、「重大な後遺症事案」であり、また、No.17の判決は、不法行為責任ではなく、「診療契約上の債務不履行責任」の事案です。このように少し異なる事案でも、平成12年判決が引用され、これに沿った判断がなされています。

(3)No.16は、高裁判決ですが、一審の地裁判決も最高裁判所のホームページで公開されていましたので、両方を踏まえて、ご紹介します。なお、名古屋高裁に問い合わせたところ、この高裁判決は確定したそうです。

カテゴリ: 2004年2月27日
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