今回は、病院側に過失があった場合で、患者の持病が損害賠償額の算定に影響を与えた事案についての判決を2件ご紹介します。
No.140の事案では、肝硬変と診断された患者自身も、その後、保険適用の便宜上の病名である慢性肝炎を病院に申告していたのですが、裁判所は、専門家たる医師としては、患者の訴えを参考にしつつも最終的には自己の専門的知見をもって患者の疾患につき判断すべきものであるとして、病名を失念した医師の責任を肯定しました。
No.141の事案では、患者は生存中ですが、後遺障害等級1級に該当する後遺障害を負っています。そして、裁判所は、患者の夫や子供についても、「妻ないし母が本件後遺障害のために意思疎通能力を失い生命維持に必要な身辺動作について常時介護を必要とするようになったことによって、患者が死亡した場合にも比肩すべき精神的苦痛を受けたであろうことが推察される」と判示して、夫や子供についての固有の慰謝料として、それぞれ200万円ずつを相当と判断しました。
どちらの判決も、実務の参考になろうかと存じます。