医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.128、129】

今回は、入院中の感染について、病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介します。

No.128の判決は、もともと予後の厳しいことが予想された癌患者が、感染症の結果、入院が継続し、家族とのコミュニケーションも十分にとれなくなったため、人生最期の時期を平穏に送ることができなくなったことと、若干にせよ死期が早まったことを総合して、精神的損害に対する慰謝料として1200万円という比較的高額の慰謝料を認めた事案です。

No.129の判決では、MRSA感染予防対策自体には過失はないものの、MRSA感染治療には過失があるとの判断が示されました。予防対策自体の過失を否定するにあたっては、組織的な対策(感染防止委員会の設置、院内感染マニュアルの作成と職員への周知など)が講じられていたことやマニュアルの手順に沿った運用が考慮されています。

他方で、感染治療の過失を認定するにあたっては、バンコマイシンの投与時期の遅れを指摘しています。

両判決とも、実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2008年10月15日
ページの先頭へ