今回は、最高裁判所のホームページで紹介された、高等裁判所の判決(控訴審判決)からご紹介します。
控訴した側を控訴人、控訴された側を被控訴人と呼びます。
No.11の判決は、患者側の請求を大部分認めた一審判決に対して、病院側が控訴したものですが、控訴審は控訴を棄却しました。
No.12の判決は、一審の判決がホームページで紹介されていないため、内容の一部が不明ですが、推測可能な箇所は補充してご紹介いたします。控訴審判決は、一審の判決の一部を修正・追加変更するという記載内容のことも多く、一審判決(原判決)とあわせて読まないと、内容の細部が完全には理解できないこともあります。なお、この事件では、原告・被告の両方が控訴しているため、判決中では控訴人、被控訴人という名称ではなく、第1審原告、第1審被告という用語を使っています。
No.13の判決も、一審の判決がホームページで紹介されていないため、内容の一部が不明ですが、推測可能な箇所は補充してご紹介いたします。
なお、この判決では、県が設置した病院で救急医療行為を行った医師に過失があるとしながら、県の債務不履行責任だけを認め、医師の責任は否定しています。その理由として、医師の行為は「公権力の行使に当たる」と判示しています。この部分だけ見ますと、国家賠償法第1条(注)に基づいて県の責任を認めたようにも読めます。同条の解釈として、「国または公共団体が被害者に対して賠償の責に任ずるのであって、公務員個人はその責を負わない」とする最高裁判所の判例があるからです。
しかし、一方で、県の責任については債務不履行責任であることを判決で明示しており、県の責任の根拠と、医師個人の責任を否定した根拠との関係は必ずしも明確ではありません。
ここでは、速報という意味で判決内容をお伝えいたしますが、この判決についてはいずれ一審の判決も踏まえた、より詳細な評釈が出ることを望みます。
(注)「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」