医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.104、105】

今回は、損害賠償の額に関して、特殊事情を考慮して減額が認められた判決を2件ご紹介します。

No.104の判決に出てくる、「医療保護入院」とは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健法)第33条に定められている精神障害者の入院形式です。精神障害者で、自傷他害のおそれはないが、医療及び保護のために入院を要すると精神保健指定医によって診断された場合、精神病院の管理者は本人の同意がなくても、保護者の同意により、精神科病院に入院させることができます。保護者でなくても、「扶養義務者」の同意があれば4週間を限度に入院させることができます。精神障害者の入院形式には、この他に「任意入院」(精神保健法22条の3)、「応急入院」(同法33条の4)、「措置入院」(同法29条)「緊急措置入院」(同法29条の3)があります。

この判決では、患者の学歴、就労状況診断内容などから、逸失利益の算定にあたり、本件医療事故がなければ患者が得ることのできた年収は賃金センサスによる男子労働者の同年代の平均年収の5割と推認しました。

No.105の判決紹介にあたっては、一審判決も参考にしました。この事案は一審と控訴審とで、「症状固定」についての判断が異なっています。一審判決は、患者Xについて人工肛門閉鎖術を施術することが社会通念上不可能であると確定したとまでは認められず、Xの症状が固定しているとは認定できないと判示して、症状固定を前提とする症状固定日の翌日から平均余命の間の逸失利益や後遺症慰謝料の損害を認めませんでした。

これに対して控訴審判決は、治癒の可能性があるとはいえ、危険性を伴う手術を受けることを患者に強いることは、医学的にみても法的にみても酷であると評価できるとして、症状固定を認定しました。ただし、治癒する可能性の機会を放棄した点について過失相殺法理を類推適用して20%の減額をしています。

カテゴリ: 2007年10月12日
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