今回は、大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部部長であり、病院教授である中島和江先生が翻訳した「レジリエント・ヘルスケア-複雑適応システムを制御する-」をご紹介します。
本書は、レジリエンス・エンジニアリングの概念と手法をヘルスケアの分野の課題に応用する「レジリエント・ヘルスケア」の全体像を描いた初めてのものだそうです。
一般にレジリエンスは、逆境にもかかわらずシステムがうまく動き、実存する脅威にもかかわらずシステムが持続している特性という良い側面から紹介されることが多いかもしれません。しかし本書の中では、レジリエンスの使いすぎや誤った使い方についても言及されています。
レジリエンス・エンジニアリングについて既にご存知の方も、本書をご覧いただくと、今までの知識を整理しながら、さらに一歩進んだ理解を得ることができると思います。
(「表紙」より)
医療は時々刻々と変化する複雑適応システムであり、本質的に脆弱である。このようなシステムにおいては、人々の柔軟性のある対応こそがシステムをうまく機能させる源だとされている。このような柔軟性はレジリエンスと呼ばれ、諸外国の研究者は日本語の「禅」という漢字をあてている。言い得て妙といえよう。
これまで医療安全向上には「失敗の原因を特定し、それに対策をほどこすことによって失敗をなくす」というアプローチがとられてきた。失敗には特定の原因があると考えられてきたからだ。しかし、この伝統的なアプローチが成果をあげているとは言い難い。この閉塞感の打破が期待されるのがレジリエンス・エンジニアリングである。成功も失敗もその起源は同じであり「うまくいっていることに着目し、事故の発生を待つことなく先行的に対応し、うまくいくことを増やす」というアプローチがその鍵となる。
本書ではこのアプローチを医療に応用するための理論と手法を解説する。
レジリエント・ヘルスケア-複雑適応システムを制御する-
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