今回は、「人は誰でも間違える」「医療の質」に続き、米国医学研究所のリポートとして翻訳出版された「患者の安全を守る」をご紹介します。
前2冊においては、職場環境の視点を見逃さないように指摘しているものの、その対処法については詳細に言及されていませんでした。そこで、患者を安全にケアするために必要な職場環境をデザインする際のガイダンスを提供したのが本書です。
本書は、医療提供において大きな部分を占め、医療システムに欠かせない要素であるナースの労働環境に焦点を当てています。看護スタッフのあるべき配置水準、看護師のマネジメントへの参加、現場システムの再設計などの勧告を提示しています。
そして、勧告のすべてを実行することによって、ナースの労働環境の中に必要な多くの患者の安全相互強化策が以下のリストのようにつくられるとしています。
(ナースの労働環境の中で必要な患者の安全対策)
- 安全を重視する経営陣
- リーダーシップおよびエビデンス・ベースト・マネジメントの構造とプロセス
- 効果的な看護リーダーシップ
- 適正な人員配置
- 継続学習と判断支援のための組織的なサポート
- 多職種協働を推進するメカニズム
- 安全を推進する仕事の設計
- 患者の安全を強化し続ける組織文化
なお、Executive SummaryのPDFファイルが米国アカデミープレスのホームページからダウンロードできますので、よろしければご参考になさってください。
(「監訳者まえがき」より抜粋)
わが国においても、医療安全の確保のためにさまざまな対策が計画され、実施されてきた。2006年度の診療報酬改定では、看護職の人員配置基準が見直され、看護要員の実質配置が導入された。IOMリポートの勧告は、普遍的な内容を含んでいるものであり、わが国においても大きな示唆をもたらすものと確信している。
「患者の安全を守る 医療・看護の労働環境の変革-Keeping Patients Safe : Transforming the Work Environment of Nurses- 」
米国ナースの労働環境と患者安全委員会 医学研究所/著
目次全体の概要 患者の安全は今も脅かされている
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