今回は、東京医科歯科大学大学院循環器内科教授である磯部光章氏の「話を聞かない医師 思いが言えない患者」をご紹介します。
昏睡状態に至った患者の家族に「時間の問題だ」と宣告したところ、「気功師を連れてきたい」という申し出を受けたこと。失神で搬送されてきた女性に、植え込み型除細動器の手術を勧めたところ「私の命を救うために、500万もする器械を使っていただくのはお天道さまに申し訳ない」と言って泣かれたこと。2週間の入院について説明したが、「どうしても先に金魚にエサをやらないと死んでしまうから」と言って治療直前に帰っていった急性心筋梗塞の患者こと。突然右半身が麻痺した妊婦と治療の選択肢について繰り返し話し合ったこと。患者は病気に対してどのような診療を欲するか、実に千差万別であることが、著者自身の経験を交えながら綴られています。
「医師との対話はそれだけで患者の心を癒す力がある。コミュニケーションそのものが治療手段にもなる。コンピュータが診断を下して、治療法を求める時代は当分こないと思われるし、筆者はそんな時代に医師をしていたくない。」という著者が、上記のような患者にどのように対応したかは、本書を手にとってご覧ください。
(「おわりに」より抜粋)
どんな人でもよい人生をおくりたいと思っている。何がよい人生であるかは人それぞれであろうし、答えのでない問いであろう。よい人生をおくることを援助するのが健康に直接かかわる医師の使命であろう。そのために医師に何ができるかを考える、逆に患者は何を医師に求めるのか、すべての医療はこの問いかけと対話に始まるべきである。
話を聞かない医師 思いが言えない患者
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おわりに |